2018年11月26日月曜日

『光学製品の倍率について』旧三愛メガネHPコラムより。

お客様の質問で一番多いのが、光学製品の倍率についてのものです。

「この天体望遠鏡の倍率は200倍ですが、木製の模様観察できますか?」
「3000倍の倍率を持った顕微鏡はありますか?」
「50倍の双眼鏡がほしいのですが?」


倍率は光学系の対物レンズと接眼レンズの焦点距離によってきまります。接眼レンズの焦点距離を、どんどん短くしていけば、倍率は無限に上がっていきます。100万倍の望遠鏡も簡単に制作可能?と言うことになります。

しかし、これは計算上の話で、実際には有効倍率というものがあります。天体望遠鏡の場合は、対物レンズの有効径(mm)に2~3を掛けた値が有効最高倍率といわれているようです。仮に対物レンズ径100mmの場合、300倍以上に倍率を上げる接眼レンズを選んでも意味がないということになります。ぼやけた像をを更に拡大していくだけです。

このように、倍率を上げるためには、対物レンズを大きくしなければならないことが理解できます。分解能は倍率で決まるのではなく、対物レンズ(反射望遠鏡の場合は反射鏡)の大きさで決まってしまします。最初の質問「木星、の模様の観察」では、対物レンズが50mm以下では難しく、100mm以上をおすすめします。


顕微鏡

一般の生物顕微鏡の最高倍率は1000倍ぐらいです。原理的には2000倍以上の倍率は無意味です。これは可視光線(400mm~800mmの波長を持った電磁波)を利用しているためで、分解能に限界があります。したがって3000倍では可視光線を使わない、電子顕微鏡の様な装置が必要となります。

双眼鏡

双眼鏡の倍率は一般的に6~10倍です。最近、高倍率のズーム式双眼鏡が多種販売されるようになりましたが、当店では10倍以上の製品はあまりお薦めしていません。双眼鏡の特徴は、手持ちで使用すること、両眼で観察(両眼視)することです。20倍以上の双眼鏡を手持ちで覗いてみると、視野がゆらゆら揺れて、大変見にくく、気持ちが悪いことが分かります。また、倍率が高くなるに従って視野が暗く、瞳径が小さく、愛ポイントが短くなり、覗きにくくなります。バードウォッチングに行き、船酔いになったという話をよく聞きますが、倍率が高すぎることが原因となることもあります。高倍率の双眼鏡は三脚で固定して使用することが大切です。

両眼で観察する双眼鏡は、右と左の光学系がぴったりと合ってなければなりません。人の眼は右と左の網膜の像を、頭の中で1つに合成する(融像)能力が備わっていますが、左右の像がずれていると、頭痛や吐き気を催すことになります。双眼鏡は高倍率におなるほど、左右の光軸合わせの許容誤差が小さくなり、光学系は高い精度が要求されています。高倍率をお薦めしない一つの理由はここにあります。「見え味が良い」双眼鏡が一般的に「高額」なのは、両眼視機能を十分考慮した設計と精度の高い組み立てがしているためと考えられます。

大型船に備え付けられている双眼鏡やプロの漁師さんたちが仕事で使用する双眼鏡のほとんどが、7×50という規格の7倍の双眼鏡です。仕事で本当に役に立っている双眼鏡が、意外に倍率の低いことがおわかりいただけましたか?



旧三愛メガネHPより引用

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